自筆証書遺言の保管制度の新設
令和2年7月10日以降、法務局に、自筆証書遺言を保管することができるようになります。


いままで、自筆証書遺言を書いた方は、自宅の仏壇や金庫に遺言を保管したり、信頼できる人に預けたりしていました。

しかし、紛失したり、改ざんされてしまうリスクがあったり、災害に弱いなどという欠点がありました。


令和2年7月10日以降は、法務局に、遺言書保管所という部署が設置されます。

自筆証書遺言を持参すると、遺言の原本とともに、遺言の画像データも保管されます。

保管された遺言は、いつでも撤回することができますし、書き換えることも可能です。


遺言を作成した方がご存命のうちは、法務局は、当人からの問い合わせにしか回答しません。

一方、遺言を作成された方が逝去された後は、相続人などが法務局に問い合わせれば、遺言の画像データを入手できます。

そして、ひとりの相続人が画像データを請求した場合、法務局は、他の相続人に対しても、遺言が保管されていることを通知することになります。


また、自筆証書遺言は、作成された方が亡くなった後に、家庭裁判所に「検認」の手続を申立て、裁判官の前で、遺言の状態を確認する必要があります。

しかし、法務局に保管された遺言の場合、遺言が改ざんなどされていないことは明らかですので、検認の手続は不要となります。



このような便利な制度ができた一方、法務局は、実際の遺言の中身まで踏み込んでアドバイスをすることはありませんので、この制度を利用する場合でも、事前に、専門家に見てもらった方がよいと思います。


令和2年1月21日
保証人の制度の変更2
前回に引き続いて、保証人の制度の変更についてご説明させていただきます。

今回は、事業に関する保証人の場合です。


事業に関する連帯保証人になる場合が、いくつかありますね。

例えば、金融機関などからお金を借りる際の連帯保証人や、オフィスや倉庫などを借りる場合の連帯保証人などです。


令和2年4月1日より、事業に関する保証人になる場合には、主たる債務者(お金を借りた事業者やオフィスを借りた事業者など)が、保証人に対して、下記の情報提供をすることになりました。

主たる債務者の財産及び収支の状況
他の債務の有無や金額、返済状況
その債務の担保として提供しているものがあるかどうか

もしも、主たる債務者がこの情報提供を怠っていたり、うそを言っており、債権者がそのことを知ることができた場合には、保証契約が取り消されることもあります。


また、特に、事業用の金銭を借りる場合の保証人の場合、保証契約の前の1ヵ月以内に、公正証書にて保証人になる意思を表示しなければならない、ということなりました。

前回の、「根保証の場合の極度額の定め」に加えて、事業用の債務の保証人については手厚い保護が加えられました。

今までの契約書をそのまま使っていると、保証契約が無効になったり、取り消されたりすることがあるので、注意しましょう。


令和元年12月18日
保証人の制度の変更
令和2年4月1日より、保証人の制度が変更になります。

特に、賃貸物件の連帯保証人に関しては、大きな影響があります。


今までは、賃貸物件の連帯保証人になった場合、借主が滞納した家賃などを、全額請求されることになっていました。

入居のために契約する時には、将来、いくら滞納するのか分かりません。

このように、あらかじめ、連帯保証人が負う責任の範囲が不特定な保証契約を「根保証(ねほしょう)」といいます。


しかし、賃料の2年分や3年分など、予想外に高額の請求が来て、親切心から連帯保証人になった方が苦しむ事例も多くありました。

そこで、連帯保証人の保護が図られることになりました。


令和2年4月1日以降に根保証の契約をする場合は、契約書に「極度額」を定めなければ、連帯保証契約が無効になります。

例えば、「極度額を50万円とする」と定めた場合には、いくら賃料の滞納があっても、連帯保証人には50万円までしか請求できません。

今まで作った賃貸借契約書などを見直さないと、保証人との契約が無効になるおそれがあるので、注意しましょう。

なお、保証会社のように、法人が保証人となっている場合には、このような規定はありません。


令和元年12月18日
成年後見制度の欠格事由の廃止
ご病気や障害などで判断能力が不十分な方の権利を守るための制度が、成年後見制度です。

成年後見制度には、判断能力に応じて、後見・保佐・補助という3つの類型があります。

しかし、今まで、後見・保佐を利用した場合には、いくつかの権利が制限されてしまう問題がありました。


例えば、後見・保佐を利用している方は司法書士になれない、と司法書士法に書かれています。同様に、医師、弁護士、公務員、会社の取締役など、たくさんの資格制限があります。


しかし、後見・保佐を利用していると一口に言っても、その状態は人によって様々です。

地域社会に溶け込んで生活していらっしゃる方、元気に就労していらっしゃる方などもいらっしゃいます。

公務員として働いていた方が失職してしまう、などということが起きてしまうと、成年後見制度が使いにくいものとして敬遠されてしまいます。



そこで、約180の法律を一括して見直し、後見・保佐を利用している方の権利制限を廃止する立法が行われました。

これによって、成年後見制度が、一層、使いやすくなります。


ほとんどの法律の改正が2019年9月14日に施行されましたが、一部の法律は異なることもあります。

成年後見制度の利用を考えていらっしゃる方は、身近な司法書士にご相談ください。


令和元年12月14日更新
預金の払戻制度について
今回は、改正された相続法についてご説明いたします。
2019年7月1日に、相続預貯金の払戻制度が施行されました。

今まで、亡くなった方の預貯金は、相続人全員の合意がないと、引き出すことは難しかったのです。
例えば、亡くなった方に配偶者がおり、子どもが3人いる場合には、その全員で話し合いをまとめ、一定の書類を金融機関に提出しないと、預金の引き出しができませんでした。
従って、葬儀費用が必要や当面の生活費がすぐには引き出せなくなってしまい、困ってしまうケースが見られました。
もちろん、少額の預貯金については、全員の話し合いがまとまる前でも金融機関の判断で引き出すこともできたのですが、あくまで例外的な扱いにとどまっていました。

そこで、2019年7月1日から施行された改正民法には、預金の一部については、相続人全員の合意がなくても引き出すことが可能になる、という規定が作られました。
相続人のうちの1人だけが金融機関に請求して、払戻ができる預貯金の額は、
(預貯金額) ÷ 3 × (請求をする相続人の法定相続分)
となります。
ただし、上限は150万円まで、ということになっています。

これによって、葬儀や、当面の生活費などが引き出しやすくなったといえますね。
このように、民法の改正は、市民のニーズに合わせて行われているものでもあります。

相続についてお困りのことがありましたら、身近な司法書士までご相談ください。
自筆証書遺言の様式が変わりました!
2019年から、相続のルールが大きく変わることはご存知でしょうか。
相続のルールは、民法という法律に規定されています。
今年、民法が大きく変わりました。
今回は、そのうちの1つをご紹介します。

自筆証書遺言の書き方が変更になりました。
遺言には、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」と、遺言者が自筆で作成する「自筆証書遺言」をはじめ、いくつかの種類があります。

自筆証書遺言は、本文、日付、署名など全てを自筆で書き、押印する必要があります。
しかし、たくさんの不動産や預金の明細を手書きするような場合には、自筆するのがとても大変で、間違ってしまうという危険もありました。

そこで、2019年1月13日からは、財産の明細に関しては、パソコンで打ったり、銀行の通帳や、不動産の登記事項証明書をコピーしたりする、ということが認められるようになりました。
そして、この財産の明細に、全て、署名押印をすることになります。

財産の明細ではない、遺言の本文については、今まで通り手書きをすることになります。
これにより、自筆証書遺言が一層使いやすくなるものと思われます。

ただし、独力で自筆証書遺言を作成した結果、ミスがあったり、無効になってしまったりすることもしばしばあります。ぜひとも、身近な司法書士にご相談ください。